加藤のコラム第18号
ところてんを所沢名物だと勝手に思い込んでいた
仕事の関係で、3年間埼玉県所沢市に住んでいました。単身生活だったので、お粗末ながらも自炊していました。週に1回くらいスーパーマーケットで食料品を購入するわけですが、なぜかところてんがやたらと目につきまして、太らなそうだしと思って、一時期よく買っていました。ある日、ふと思ったのです。「ところてん…、ところざわ…。ところてんって所沢名物なんだ。だからスーパーにたくさん売っているんだ。地元に貢献しよう」
思い込みというのはやっかいなもので、調べればすぐにところてんと所沢が無関係なことはわかるのでしょうが、思い込んでいますから調べる気なんてない。所沢のためにと、ますますところてんを食べるようになりました。
あるとき、自炊できそうもない風体の加藤なので、ある方が「加藤さん、ふだん何を食べているんですか?」と気にかけて声を掛けてくださいました。自信満々に「ところてんですね。所沢名物を満喫しないと」と言ったボク、「?」マークが顔に出ているその方。なんとなく気まずい空気が漂い、「あれ?ところてんって所沢名物ですよね?」と尋ねたら「そんなはずはないです」というお答え。しかし、ボクは思い込んでいますから、追い打ちの確認をします。「所ジョージさんって所沢出身でしょ?ところてんも所沢でしょ?」「ところってついているからって、その全部が所沢のわけないでしょ」と一蹴されました。
根拠も何もない、ただの思い込みだったことに気付き、頭の中で何かが崩れる音がしましたが、静岡県伊豆地方が名産地だとわかり、ひとつ賢くなりました。ところてんマイブームが急速にしぼんだのは言うまでもありません。
ボクはこういう思い込みがそれなりにありまして、昔々、スキー場にゴンドラリフトが導入された時代、ドラゴンリフトだとなぜか思い込んでいて「ドラゴンのシートで運ぶのか。ドラゴンのように速く運ぶということだな」と勝手に想像していました。スキー場に行ったら、ドラゴンはどこにもいない。あるのはゴンドラ。「ドラゴンじゃねえんだな」と一人つぶやいたボクでしたが、いっしょに行った仲間たちは「何言ってんだ?」と全く相手にしていませんでした。ドラゴンリフトと思い込んでいた男にかまっているひまはなかったのでしょうが、だれも何も突っ込んでくれないのでよけいに情けなくなったのを鮮明に覚えております。
思い込みにはご注意を。
自閉症者地域生活支援センターなないろ 加藤 潔