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加藤のコラム

加藤のコラム第23号

障がいは関係性の中に存在する

 

4月2日は世界自閉症啓発デーです。2007年の国連総会で、カタール王国王妃の提案により、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」(WorldAutism Awareness Day)とすることが決議されました。ただ、自閉症と4月2日には特別な由来はないようです。

この日は、「癒やし」や「希望」などを表すブルーを自閉症のシンボルカラーとして、ライトアップや青いものを身につけるなど、あちらこちらでブルーが展開されます。なないろもささやかながら応援させていただいております。

 

さて、自閉症は「スペクトラム」であると言われます(スペクトラムについては、加藤のコラム第16号でも書いています)。いろいろなタイプの自閉症の方がいるわけですが、(こんなことを言うと怒られるかもしれないけれど)「自閉症であることに困っているのではなくて、少数派としての生きにくさに困っている」と、加藤は考えています。その生きにくさは、取り巻く周囲の環境との関係性によって顕在化します。周囲の環境がその方に合っていれば、自閉症であることが不都合や不利益をもたらすことはないわけです。

 

別の例でお話ししましょう。加藤は、頭部地域の社会資源が寂しい状況になってきています。これを専門用語で「薄毛」あるいは「ハゲ」と言いますが(後者は上品な表現ではございませんので、以降は前者の用語を用います)、その状態はいろいろなタイプがあって、ひとつの連続体と考えられます。言い換えるならば「薄毛スペクトラム症(USD)」です。しかしながら、少なくとも加藤は薄毛であることで困ることはまったくありません。病気じゃないし、劣っているわけでもないし。ちなみに、日本人男性の全年齢における薄毛率は30%であるというデータがあるらしいですが、7割もいる薄毛じゃない人たち(多数派)の中で少数派として生きていると言えます。では、何が少数派としての生きにくさになっているか。それは、カッコ悪いとかダサい等の言葉で表現されるような見方をされる場面があるということ。そうした見方を周囲がしている場合、その関係性の中に薄毛スペクトラム症(USD)の障がいが存在するのです。逆に言えば、「薄毛だから何?人としての魅力と何の関係もないじゃん」という周囲の環境であれば、薄毛スペクトラム症(USD)は存在すらしなくなるのです。

 

自閉症スペクトラム症(ASD)も薄毛スペクトラム症(USD)とこの観点では同じです。周囲の環境という関係性の中に障がいが存在します。自閉症の方を取り巻く周囲の環境を少しでもいいものにしていこうという思いを改めて強くする日、それが4月2日の世界自閉症啓発デーです。年度初めにこの日があることで、令和4年度も頑張ろうという思いになります。

 

自閉症者地域生活支援センターなないろ  加藤 潔