加藤のコラム第101号
101回目のプロポーズ
101号だから、「101回目のプロポーズ」というドラマのことが頭に浮かんだのですけれど、30年以上も前のドラマだったんだと気づき、年月の流れの早さに「30年前?ありゃー」と声を出しそうになりました。
そんなドラマ知らないという方も多々おられるでしょうから、ざっくりとストーリーをまとめます。99回フラれ続けているさえない中年男が美しい女性を好きになり、一度はフラれ(100回目)、最後に恋が成就する(101回目)というお話です。
主演は武田鉄矢さんと浅野温子さん。主題歌はチャゲアス。武田鉄矢さんの弟役が江口洋介さんだった。ロン毛ということだけ似ている兄弟。竹内力さんが、さわやかな好青年役で出ていた記憶があります。金貸しのコワモテ役にはまる前ですね。
このドラマの有名シーンは、以前に恋人を亡くしたことのある浅野温子さんへの思いを表現するため、武田鉄矢さんがトラックの前に飛び出す場面。トラックはギリギリで止まり、トラックの運転手さんは「バカヤロー、気をつけろ」と言い、またトラックを走らせていくのであります。そして、武田鉄矢さんは浅野温子さんに「ボクはしにましぇん」と熱いメッセージを伝えたのでした。確かにしにましぇんでした。
しかし、ちょっと待ってくださいよ。トラックの運転手さんからしたら、こんな迷惑行為あるかいって話です。勝手に飛び出されて、慌てて急ブレーキを踏み、寸前で事故を回避できたとは言え、もうダメだと一瞬思ったに違いありません。ほっとした瞬間すぐに激しい怒りの感情もわいたことでしょう。にもかかわらず、「バカヤロー、気をつけろ」とだけしか言わず、さっと立ち去ったわけです。なかなかりっぱな運転手さんだと思いませんか。そういうりっぱな人の描き方として、乱暴な言葉を言い残して立ち去ったみたいなのはどうなのかなと、ボクは30年以上ずっと心にひっかかかっておりました。
武田鉄矢さんには、浅野温子さんにアピールする前に、まず先にトラックの運転手さんに対して「しゅみましぇん」とちゃんと謝罪してから、浅野温子さんに向かって「ボクはしにましぇん」と言ってほしかった。そうしたら、運転手さんもその情景と状況を察し、「しあわせにならないといけましぇん」と言いたくなったはずで、言い残す言葉が変わったと思うんですよね。運転手さんは「オレ、なんかいいことしたかもな」という思いに浸りながら立ち去ることができたでしょう。
別にドラマに文句を言っているわけではございません。すばらしいドラマだったと思っています。ただ、人って、自分が発する言葉やメッセージによって、誰かの価値を高められることもあるよなあと思うのであります。ろくでもない言葉しか発していない加藤ですが、たまにはだれかの価値を高めるような言葉を発せられるように精進したいと思います。
自閉症者地域生活支援センターなないろ 加藤 潔