加藤のコラム第142号
腕と心の二刀流
自分の命を委ねるならどっちでしょう?
悪徳だけれど腕は一流の医者か、そんなに腕があるわけではないけれど優しく誠実に寄り添ってくれる医者か。
そうそう簡単に選べるものではないですわな。自分の年齢や置かれている状況によって判断基準は変わるでしょうし。
小学生か中学生くらいのときに、ブラックジャックという手塚治虫先生の名作漫画にはまりました。無免許医であるブラックジャックが、その天才的な手術の腕で命を救う見返りとして、法外な診療報酬を要求するというのが基本的なストーリーです。しかし、ブラックジャックはけっして悪徳外科医ではなく、実は真摯に命に向き合っている心ある医者だということが物語に深みを与えているのであります。
腕だけはいいとか心だけはあるとか、片方だけではなく、その両方を持っていないと本当に人を助けることはできないのだよと手塚治虫先生が言っているような気がします。まさに二刀流を体現していくことが大事なのだと思います。
医療だけの話をしているのではございません。
対人援助職は、腕と心の二刀流を追い求めていかないとならないぞということなのです。
つまりは、支援力を上げる努力と人間力を磨く努力を共存させていくことが対人援助職の矜持だとボクは考えていまして、働き方改革やワークライフバランスを大事にする中でも、その努力は必須でしょ? 二刀流は大谷選手だけのものではなくて、ボクらも二刀流を追究していかないとね。
ボクは腕もないし心も貧しいのでブラックジャックのような二刀流を究めるレベルにはなれそうもないですが、めざすことだけはできますので。
対人援助職は「めざせブラックジャック」なのですよ。念のため申し添えますが、無免許をめざせと言っているのではなく、腕もしっかりあって心もちゃんとある職業人をめざそうということです。
でもまあ、今のボクにできるのは、黒色の容器でお酒を飲むことくらいです。ブラックジョッキ。
自閉症者地域生活支援センターなないろ 加藤 潔