加藤のコラム第143号
ボクのおばさん
先日、オヤジの墓参りに行ってきました。函館に墓があるのですが、途中のとある町に住んでいるおばを拾っていくというのが定例です。おばはオヤジの妹で80歳になります。旦那さんはすでに鬼籍に入られていて現在一人暮らしです。ご近所さんがみなさんとても親切で、一人暮らしのおばをいろいろとフォローしてくださっていまして、墓参りでおばを拾っていくときにはご近所あいさつもさせていただいております。
小さいころから、ボクは彼女をおばさんと呼んだことはなく、お姉ちゃんと呼んでいました。正確な表現をするならば、おばさんではなくお姉ちゃんと呼ぶようにしつけられたということになるのでしょう。したがって、80歳だろうが何だろうが、今でもお姉ちゃんと呼ばないとならないオーラをビンビン出しております。
そして、ひたすらしゃべり続けるタイプの人なのですが、車の中でもひたすらしゃべっておりました。
「バイデン大統領は私と同じくらいの年齢だけど、なんか言い間違いも多いみたいで、私のほうがずっとしっかりしているわ。ねえ?」と聞いてくるので、「バイデンさんも、姉ちゃんだけには言われたくないと思ってるんじゃないの」と言ったのですが、これが彼女のしゃべりスイッチをさらに深く押してしまったようで…。「あら、そんなわけない。私の記憶力に衰えはないんだわ。最近の流行は知らないけれど、昔のことは鮮明だよ。○○町に住んでいた□□さんは私のことをずっと好きで、こんなことやあんなことを言ってたの」等々、聞いてもいないことをずっとしゃべっていました。黙って運転していると「あんた、話聞いてるのかい?」と、ちゃんとチェックしてくるので、たまに愛想笑いをはさまないとなりません。その愛想笑いもおろそかになると、「あんた、小さいころ、私にこんなこと言った。覚えてるか?」と、大昔のエピソードを突然持ち出して優位に立つ作戦を展開してきます。「はいはい、まいりました」と言うしかないわけですが、それで一区切りしたことになるのか、また違う話がエンドレストークで始まるのであります。
ちなみに、彼女はりっぱな喫煙者なので、一服タイムも時折入れないとならないのですが、そこはボクの喫煙インタバルに合わせてくれます。タバコを吸えるうちが健康だからという理論は完全にボクと一致しており、そこには血縁を感じますね。
このエンドレストークの三分の一くらいは、先立たれた旦那さんとのエピソードが入ってくるのですけれど、夫婦としていい時間を過ごしてきたんだろうなと思えます。ボクのおばさん、いえ、お姉ちゃんはこんな人です。
自閉症者地域生活支援センターなないろ 加藤 潔