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加藤のコラム

加藤のコラム第152号

固定電話しか使えない期限付き法令が出たらどうなるか

 

ボクが小さい頃、家には電話がありませんでした。電話を持っているご近所さんが緊急時の連絡先になっていたような記憶があります。

 

その後、家に電話がやってきましたが、当時の多くの家庭が「電話と言えば黒」「居間の外の廊下とかに電話があった」というところではないかと思います。指を入れてダイヤルを回すタイプの電話機が多かったときに、プッシュタイプの電話を置いていた友達には「おまえんち、金持ちなんだな」と言っていたのを思い出しました。

 

さて、電話は一家に一台という時代があったわけで、その電話にはたいていお母さんが最初に出るという日本っぽい慣例がありました(サザエさんを参照してください)。現在は、一人一台の通信手段を持っている時代ですけれど、その昔は、お目当ての彼女に電話するときに、親に聞かれたくないからなんかそれっぽい用事を作って外の公衆電話に行き、そこから電話を掛けて、彼女のお母さんとまず話してから取り次いでもらうといういくつかのハードルを乗り越えていたのです。

 

この面倒な手続きを経なくていいのが今の時代。確かに便利になりました。しかし、不便だった昔がダメということでもないような。少なくとも、あこがれの彼女のお母さんにはちゃんとした日本語で、しっかり自分を名乗って、さわやかな印象を与えなくては取り次いでもらえない可能性があります。まして、お父さんが最初の電話に出ちゃったときの緊張感たるや、声が裏返りながらもちゃんと話さなければならない試練が課せられます。でも、このハードルが人と接する際の格好の訓練になっていたように思うのです。電話でのやり取りを何度もシミュレーションし、そして気合いを入れて電話するという一連の流れが、人として一段上がる成長の場になっていたのではないかと、昭和コテコテ人間のボクとしては思うのでありました。

 

もちろん、今の時代の通信環境のすばらしさは言わずもがなですけれど、たまに不便さの中で自らを高める場を持つための施策があってもいいのかなと考えたボク。「固定電話しか使えない期限付き法令」を3カ月くらい実施みたらどうでしょうか。連絡ツールは固定電話と郵便、伝書鳩くらいしかない期間を3か月やってみようという法律です。もちろん、さまざまな事情で最新の通信環境を使わなければ生命や安全が脅かされる方や、コミュニケーションに難しさを抱える方は除きますけれど、3カ月くらいのリセット期間があれば、SNSでの炎上とか誤爆とか他者への暴言とか、そういったことへの再学習もできるような気がするのですけれど。

 

新しい総理大臣の方、就任記念施策として、そういった実験的施策を思い切ってやっちゃってほしいです。

 

自閉症者地域生活支援センターなないろ  加藤 潔