シン加藤のコラム(理事長やってます)

シン加藤のコラム 通算第216号  あなた、かっこいいね

2025.12.11

先日、とある街のとある駅を歩いていました。その駅は、階段を降りて電車ホームに行くという構造でした。ボクがその階段に向かう通路をトボトボと歩いていると、20メートルほど先に見えた階段降り口のところにママとベビーカーに乗った赤ちゃんがいて、ママは赤ちゃんをベビーカーから降ろして抱っこしているところでした。階段を降りるのに、赤ちゃんを抱っこしてベビーカーを持って…というところだったのです。

 

「あら、エスカレーターもエレベーターもないのか」「ベビーカー持ってあげないとたいへんだな」と思い、早歩きして駆けつけようとしたら(走れよ!と後悔しました)、ボクの後方から猛ダッシュで駆け抜けてベビーカーをサッと持った若い女性がいました。

何も言わずにベビーカーを持って、何も言わずに階段を降りる若い女性。「すみません、ありがとうございます」と言いながら赤ちゃんといっしょに階段を降りるママ。完全に先を越されたと思うのと同時に、何も言わずに動いちゃうってすごいかっこいいなあと思いました。もちろんベビーカーではなく赤ちゃんを持って動いてしまったら誘拐犯と間違えられますが、ベビーカーをすぐさま持って動いたから、ママもその行動の意図がすぐにわかったわけで、最初のダッシュからすべての動きにひとつもムダがございません。

 

階段を降りるとその若い女性は片手だけ軽く上げて、これまた何も言わずにその場を離れ、電車を待つ列に並んでいました。これまたかっこいい。

 

あまりのかっこよさに、ボクはその若い女性に「かっこいいですね」と伝えたくてたまらなくなったのですが、こんなジジイがいきなり近づいて「かっこいいですね」と言ったら、絶対に変なやつだと思われるなということにはすぐに気付きました。でも、感動の気持ちは伝えたい、でも変に思われたくない。

 

その葛藤の中でボクがとった行動は…。

電車を待つ列に並んでいる女性の後ろを通った瞬間に、こっそりとその女性の背中に向かって右手の親指を上にあげる「いいね」サインをして通り過ぎ、少し離れた列に並びました。

 

だれにも見られていないと思いますが、もし見られていたら意味不明の妙ちくりんな行動です。直接伝えられない気の弱さとの着地点がその行動だったのですが、人知れずした善意の行動はきっとだれかがどこかで見ていて、きっとだれかがどこかで称賛しているに違いないと改めて思いました。

 

「だれも自分が頑張っていることをわかってくれない」と思っているあなた、そんなことはないのよ。あなたが知らないところでちゃんと見ている人がいてちゃんと評価してくれているものなのよ。

 

社会福祉法人はるにれの里 理事長  加藤 潔

◀︎ シン加藤のコラム(理事長やってます)